かの書房がゆく!

札幌市豊平区に2019年3月18日(月)オープンの新刊書店「かの書房」です。本屋さんからのお知らせなどを書いていきます。

『地域への貢献』について考えてみた

ここ数日は暖かい日が続きますね!

北海道の桜も今年はきれいに咲いていて、春だ~!と感じています。

 

昨日、ねっこアフターの皆さんによる若者自主企画の一環で「かの書房に聞いてみよう」という講演会を開いて頂きました。

同じ美園地域にあり、距離が近く(徒歩5~6分でした)、若者たちが関心を持ってくれているということで企画が始動し、無事に終了致しました。

40名ほどの方が来て下さり、メモを取ったりして話を聞いてくださっていたのが印象的でした。

私は風邪のせいで声がガラガラで、お聞き苦しかっただろうと誠に申し訳なく思っています。

少し、講演会についての裏話をしてみようかなと思います。

 

最初に打診があったのはオープンしてすぐの事でした。

実績のない本屋なのにいいのだろうか…そんな風に思いながら、ありがたいお話に速攻OK。

何度かご担当の方とやりとりをしていましたが、初めて顔を合わせるまで大学生くらいの方々を想定していました。

ところがどっこい。

はじめて顔合わせにいらしたのはほとんど高校生。しかも中学生もスタッフとして活動して下さっているというのです。

そんな若い人が話を聞くに値する内容を私は話せるだろうか…?!と自問自答しつつ、あれよあれよと当日を迎えました。

本の販売も行っていいとのことだったので、どんな方が来るのか、みんなどんな本を読む人なんだろうか…と悩みましたが、結局は若者に読んでもらいたいなという作品や、比較的読みやすそうタイトルをチョイスすることにしました。

あとは会場が幼稚園ということもあったので、絵本と、児童書も外せない。

結局、推しの作家さんと北海道の作家さんの小説、講演で話に出そうと思っていた久住さんの「奇跡の本屋をつくりたい」も含めた9タイトルを持ち込みました。

 

講演の内容は大きな枠だけ決めて、後はその場の雰囲気に合わせて話そう。

そう思って、本を持って会場へ行きました。

幼稚園の教室が控室になっていたので、私はひたすら懐かしいなーこんな感じだったなーとしみじみ。

廊下で出会うスタッフさんは中学生・高校生ばかりで(心の内側で)場違いではないかとあたふたしましたが、とうとう講演会が始まりました。

 

プロフィール

どうして本屋さんを作ったのか

どうして美園にしたのか

どんな本屋さんを作りたいか

今後、どういう本屋さんにしていきたいか

 

というような大まかなくくりを設けてお話させて頂いたと思います。

ゆったりとした空間、お子さんもいた中で皆さん熱心に聞いてくださって、細かくお話する内容を考えていなかったことを恥じながらなんとか45分語り切りました。

本の販売にも皆さん興味を持ってくださって、少し多めに持って行った小説が売り切れた時はとても嬉しかったです。

販売中、私は何人からか質問を受けました。

若者(中学~大学生くらい)の方たちが集まる「場」を運営する職員の方で、かの書房の話に興味を持って来てくださったのだと言います。

進路や就職に悩む人たちの力になれるなら嬉しいです、というようなお話をして、そして講演会後、反省会が行われました。

その場でようやく落ち着いてスタッフの皆さんと顔を合わせ、お疲れ様ですとありがとうございますをお伝えでき、講演会を通して「本を読んでみようと思う」という方が何人かいらっしゃったことに感激です。

私の言葉で少しでも意識を変えてもらえたんだ。

なにか響くものがあったんだなと実感できました。

 

今回の講演会準備に奮闘する若い人たちの、自分たちらしいやり方で成功させようとする姿に、ふと中学生の頃を思い出しました。

地元には今も昔も中学生・高校生の集まれる場所はほぼありません。

書店もなく、ファストフード店も、ショッピングモールも、カラオケもない。

誰かの家に集まるか、放課後の学校に入り浸るかの選択肢しかありませんでした。

そういうとき、学校に入り浸らない子たちは各々で帰宅し、好きなことをやっていたのだと思います。

ゲームをしたり、勉強をしたり、家業の農家を手伝ったり。

私は本を読んだり、散歩をしたりしている中学生でした。

 

身の置き場のなかった田舎者からすると、中学生や高校生、同世代で集まって講演会を企画して運営するなんて「すごい!」としか言いようがなく、また、同時にうらやましいな、という感想も抱きました。

年齢は近いけれど同級生ではない人たちとおしゃべりをし、ふざけあったり、はたまた今回のような企画をやったり。

大人顔負けの企画力・行動力・パワーを持っているんだな、と感じます。

そのように大人のスタッフさんもおっしゃっていました。

そこで『私のできる地域貢献とは何だろう?』と考えてみることに。

 

「家族」や「友達」、「学校の先生」と違う誰かと話したいと思うことが誰にでもあると思います。

決して騒ぎたいわけではなくて、最近の趣味だったり、おいしかったものだったり、そういう些細なことをぽつぽつと話せる場所は探すのが難しいのでは?と思います。

 

(経営者としては考えなくてはならない件なのですが)いつ行っても混んでる…人で混雑してざわざわしている…ということがめったにない本屋です。

そんなお店を、家・学校にしか居場所がないと感じている若者たちに「止まり木のような場所」だと思ってもらえたらいいな。

学校から帰って、新刊探しついでにちょっと寄って、本棚をぶら~っと眺めたりするだけでも、気分は多少変わるのではないかな。

何か話したいことがあったら、本屋のおばさんに「ねえねえ」と声をかけてみる。

本屋のおばさんは適当な答えしか返さないかもしれないですが、言いたいことを言ってみると、意外とすっきりするかもしれない。

そして、学生さんたちがそういう風に使いやすいお店にしたいな。

そう思うようになりました。

 

かといって急激に変えられるものではないのでしょうが「本屋のおばさんと話すと元気が出る」と言ってもらえるような、おおらかな人でありたい。

若者たちが自分の殻の中に閉じこもってしまう前に来てくれる場所になることが『かの書房流、地域への貢献』なのかなと今は考えています。